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整備・メンテナンス

バイクのタイヤ交換

交換時期の見きわめ方から、当店での作業工程、自分で換える場合の手順まで。整備の中で唯一「道具の壁」がはっきりある作業です。

タイヤは、バイクが路面に触れている唯一の部品です。エンジンの力も、ブレーキの力も、曲がるための力も、最後はハガキ一枚ほどの接地面から路面へ伝わります。ここが傷んでいると、ほかがどれだけ整っていても性能は出ません。

ところがタイヤ交換は、オイル交換やチェーン注油と違って道具がないと物理的に始められない作業です。このページでは、まず交換時期の見きわめ方を説明し、そのうえで当店での作業工程、そして自分で換える場合の手順とつまずきやすいところまで、順に見ていきます。

いつ換えるか

判断するところは4つあります。ひとつでも当てはまれば交換を考える時期です。

見るところ交換のめやす
溝の深さ法律上の限度は残り0.8mm。ただし実用上は2〜3mmで換えたほうが安心です
スリップサインサイドの△マークの延長線上、溝の底の盛り上がりが路面に接したら限度
製造年週5年経ったら点検、10年で交換がタイヤメーカーの推奨。溝が残っていても同じです
ひび割れ・偏摩耗側面に細かい亀裂が出ていたら交換。真ん中だけ減る/片側だけ減るのも交換の合図

法定限度0.8mmは二輪車の数字です(四輪の1.6mmとは違います)。

製造年週の読み方。サイドウォールに刻まれた4桁の数字がそれです。たとえば 2419 なら「2019年の24週目」。前の2桁が週、後ろの2桁が年です。ゴムは走らなくても年月で硬くなります。走行距離が少ないバイクほど、ここを見落としがちです。
スリップサインまで引っ張らないでください。0.8mmは「そこまでは違反にならない」という数字であって、「そこまで安全」という意味ではありません。溝が浅くなるほど雨の日の排水が効かなくなり、水に浮くような挙動が出ます。

溝の測り方や、チューブ・チューブレスの違い、ラジアルとバイアスの違いについては、別のページで詳しく説明しています。

当店での交換作業

実際の作業の流れです。当店ではタイヤチェンジャーを使って、ビード落としから脱着までを機械で行います。前輪か後輪か、チューブかチューブレスかで細かいところは変わりますが、大きな流れは共通しています。

【写真03】車体からホイールを
取り外したところ
① ホイールを外す後輪はチェーン・ブレーキまわりを外してからになります。
【写真04】タイヤチェンジャーの
ビードブレーカーでビードを落とす
② ビードを落とす機械のアームで、リムに食い込んだタイヤの縁を裏表とも押し外します。
【写真05】ターンテーブルに固定して
古いタイヤを外しているところ
③ 古いタイヤを外すホイールをチャックで固定し、リムを傷めないアタッチメントで外します。
【写真06】リムの清掃・点検
(ホイールだけの状態)
④ リムを清掃・点検サビや歪み、バルブの劣化をここで見つけます。
【写真07】新品タイヤを
組み込んでいるところ
⑤ 新しいタイヤを組む回転方向の指定がある銘柄は、向きを合わせて組みます。
【写真08】ビードが上がった直後
/エアを入れているところ
⑥ ビードを上げる一気に空気を入れて、タイヤの縁をリムの所定の位置に密着させます。
【写真09】車体にホイールを
組み付けているところ
⑦ 車体に組み付ける後輪はチェーンの張りも合わせ直します。
【写真10】交換後の新品タイヤ
⑧ 空気圧を合わせて完成指定空気圧に調整し、最後に走って確認します。
新品タイヤはしばらく滑ります。表面に離型剤が残っており、細かい凹凸もまだ立っています。100kmほどは、急なアクセル・ブレーキと深いバンクを控えてください。これは腕の問題ではなく、どんなタイヤでも同じです。

なぜ専用の道具が要るのか

タイヤ交換が他の整備と違うのは、手先の器用さではなく専用の工具がないと物理的に始められないところにあります。その入口が「ビードを落とす」工程です。

タイヤの縁(ビード)は、空気圧でリムの外側へ強く押しつけられ、リムの出っ張り(ハンプ)を越えた位置で固定されています。空気を抜いてもそのまま張り付いていて、手で引っぱっても外れません。これを内側の溝まで押し落とさないと、タイヤレバーが入る隙間ができません。

① 空気が入っている状態 ビードはハンプの外側で固定され、手では動かせない 空気圧が外へ押す フランジ ハンプ ドロップセンター(溝) ビード(タイヤの縁) ② ビードを溝に落とした状態 フランジとの間に隙間ができ、初めてレバーが入る 工具で 押し落とす タイヤレバー この隙間ができる 溝の底まで落とす
リムとタイヤの左半分の断面。ビードはハンプを越えた外側で空気圧に押さえつけられている。溝(ドロップセンター)まで落として初めて、レバーが入る隙間ができる。

ここが、タイヤ交換を「気軽にやってみる」から遠ざけている理由です。逆にいえば、ビードを落とす手段さえあれば、あとは手順と慣れの問題ともいえます。組み替えそのものは、力ではなくコツで進む作業です。

当店ではタイヤチェンジャーを使います

タイヤチェンジャーは、ビードを落とすアーム(ビードブレーカー)と、ホイールを固定して回す台(ターンテーブル)が一体になった機械です。ホイールをチャックで挟んで固定し、リムに直接当たらないアタッチメントでビードを外していきます。

手作業との違いは、速さだけではありません。タイヤレバーを使わないぶん、リムに傷が入りにくくなります。アルミホイールの傷は見た目の問題にとどまらず、チューブレスの場合はエア漏れの原因にもなります。ご自分で交換される方がいちばん気をつけるところを、機械が引き受けてくれる形です。

自分で交換する場合の道具

それでも自分でやってみたい方へ。最低限これだけは必要です。

  • ビードブレーカービードを落とす専用工具。これがないと始まりません。踏むタイプなら手ごろなものもあります。
  • タイヤレバー 3本2本でも可能ですが3本あると格段に楽です。先が丸く仕上げてあるものを選びます。
  • リムプロテクターレバーとリムの間に挟む当て板。これを省くとホイールに傷が残ります。
  • ビードクリームビードの滑りを良くする専用の潤滑剤。石けん水で代用する人もいますが、乾いたあとサビの原因になります。
  • エアコンプレッサービードを上げるには一気に空気を送る必要があります。手押しポンプでは上がりません。
  • エアゲージ指定空気圧に合わせるため。ガソリンスタンドの機械任せにしないほうが正確です。
  • ムシ回しバルブの中身(ムシ)を抜き差しする小さな工具。空気を一気に抜くときに使います。
  • ジャッキ・スタンド車体を安定させて浮かせます。センタースタンドがない車種は必須です。
  • レンチ類アクスルシャフトを外すサイズのもの。車種によって必要なサイズが変わります。
  • 新品のバルブ/リムバンドチューブレスならゴムバルブ、チューブタイヤならリムバンドも同時交換が基本です。
道具をひととおり揃えると、お店で数回交換できるくらいの金額になります。それでも自分でやる価値があるのは、何度も交換する方、サーキットでタイヤを使い分ける方、そして「自分の手で仕組みを知りたい」方です。1回きりなら、お店に持ち込むほうが確実で早いのは間違いありません。

自分で交換する手順

後輪を例にした流れです。前輪はチェーンとブレーキまわりの工程が減るぶん、少し簡単になります。

  1. 車体を安定させ、後輪を浮かせる

    センタースタンド、またはメンテナンススタンドで確実に固定します。作業中に車体が動くと危険なので、ここは念を入れてください。ジャッキで持ち上げる場合は、フレームの掛けてよい位置を取扱説明書で確認します。

  2. アクスルシャフトを抜き、ホイールを外す

    後輪はチェーンを外し、ブレーキキャリパーを避け、アクスルナットを緩めてシャフトを抜きます。外したカラー(スペーサー)の左右と向きを、必ず覚えるか写真に撮っておいてください。組み戻すときに分からなくなるのが最初の関門です。

  3. 空気を抜き、ムシを外す

    バルブキャップを外し、ムシ回しでバルブの中身を抜きます。完全に空気を抜かないと次の工程が進みません。

  4. ビードを落とす

    ビードブレーカーで、タイヤの縁をリムの内側の溝へ押し落とします。表と裏の両側を落とします。片側だけでは外れません。硬い個体は何度かに分けて、位置をずらしながら落としていきます。

  5. タイヤレバーで外す

    リムプロテクターを当て、レバーを差し込んでビードを少しずつリムの外へ起こします。ビードクリームを塗っておくと滑りが良くなります。力より、反対側のビードを溝の底へ落としておくことが効きます。これができていれば、驚くほど軽い力で外れます。

  6. リムを清掃し、点検する

    リムの当たり面の汚れとサビを落とします。歪みや割れがないかもここで確認します。チューブレスのゴムバルブは劣化するので、この機会に交換するのが基本です。チューブタイヤならリムバンドの状態も見ます。

  7. 新品タイヤを組む

    ビードクリームを塗り、回転方向の指定がある銘柄は向きを合わせてから組み込みます。矢印がサイドウォールに刻まれています。前後で向きが違う銘柄もあるので、前輪用・後輪用の表示も確認してください。ここでも「反対側のビードを溝に落とす」が効きます。

  8. ビードを上げる

    ムシを外したままコンプレッサーで一気に空気を送り込みます。「パン、パン」と音がしてビードがリムに収まります。上がったらムシを入れ、空気を入れ直します。ビードが均等に上がっているか、リムとの境目の線を一周見て確認してください。片側だけ浮いていると走行中に振動が出ます。

  9. 車体に組み付ける

    カラーを元どおりの向きで入れ、シャフトを通し、チェーンを掛けます。後輪はここでチェーンの張りを合わせ直します。左右のアジャスターの目盛りを同じにして、ホイールがまっすぐ入っているか確認してください。アクスルナットは取扱説明書の規定トルクで締めます。

  10. 空気圧を合わせ、走って確かめる

    指定空気圧はチェーンケースやスイングアームのラベル、または取扱説明書に書いてあります。組んだ直後は空気が抜けやすいので、翌日にもう一度測ってください。走り出しは低速から。まっすぐ走るか、ハンドルに振れが出ないかを確認します。

締め加減について。手順にはトルクレンチと書きましたが、経験を積んだ整備士は手の感覚で判断することもあります。ただしそれは「正解を知っている手」が前提です。基準を体で覚えていない段階では、比べる物差しがありません。アクスルナットは緩めば走行中にホイールが動く部分なので、慣れるまでは数値で締めるのが確実です。

つまずきやすいところ

初めての方が引っかかるのは、だいたい決まっています。

  • ビードが落ちない。いちばん多い壁です。空気が完全に抜けているか、まずそこを疑ってください。硬い個体は一度で落とそうとせず、位置を少しずつずらしながら何度も押します。
  • レバーが入らない・タイヤが硬くて外れない。力任せの前に、反対側のビードが溝の底に落ちているかを確認します。ここが浮いているとタイヤの周長が足りず、どれだけ力を入れても外れません。
  • リムに傷をつけた。リムプロテクターを省くと、ほぼ確実に起きます。アルミの傷はチューブレスの場合、エア漏れの原因にもなります。
  • チューブを噛んだ。チューブタイヤで多い失敗です。組むときにチューブがビードとリムの間に挟まると、その場では気づかず、走り出してからパンクします。少し空気を入れてチューブを膨らませてから組むと防げます。
  • ビードが上がらない。空気を送る勢いが足りていません。ビードクリームを塗り直し、タイヤをリムの中心へ寄せてからもう一度。それでも上がらなければ、無理をせずお店へ。
  • 回転方向を間違えた。組み終えてから気づくと、もう一度全部やり直しです。組む前に必ず矢印を確認してください。
  • 走り出すと振れる気がする。まずビードが一周きれいに上がっているかを見直してください。リムとの境目の線が片側だけ浮いていると、そのまま振動になります。空気を抜いて入れ直すと収まることがあります。
途中で止まってしまったら、無理に続けないでください。タイヤを外した状態のホイールは持ち運べます。ホイールだけお持ちいただければ、その状態から作業を引き取れます。途中まで自分でやってみて、ビードが上がらずに困った――という持ち込みは珍しくありません。恥ずかしいことではないので、お気軽にどうぞ。

料金はどう決まるか

金額は車種とタイヤによって変わるため、ここでは何で決まるかだけを説明します。実際の見積りはお問い合わせください。

費用の内訳変わる理由
タイヤ本体の代金サイズが大きいほど、また銘柄のグレードが上がるほど高くなります。ラジアルはバイアスより高めです。
交換工賃前輪より後輪のほうが手間がかかります。チェーン・ブレーキ・カラーの脱着が加わるためです。
バルブ/リムバンドゴム部品なので、タイヤ交換に合わせて換えるのが基本です。
廃タイヤの処分外した古いタイヤの処理費用です。

持ち込み方でも変わります。車体ごとお預かりする場合と、ホイールだけお持ちいただく場合では、脱着の手間が違います。ご自分でホイールを外せる方は、その分を抑えられます。

当店で車両をご購入いただいたお客様については、扱いが変わる場合があります。ご相談ください。

前後同時に換えるかどうか。減り方は前後で違い、一般には後輪のほうが早く減ります。片方だけ換えても問題はありませんが、前後で銘柄が違うと、グリップの出方が前後でちぐはぐになることがあります。どちらが良いかは乗り方と残り溝しだいなので、現物を見てご相談させてください。

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※ 記載の目安は一般的なものです。車種ごとの指定(タイヤサイズ・指定空気圧・締付トルク)は取扱説明書をご確認ください。
※ 作業はご自身の判断と責任で行ってください。不安がある場合は整備工場へご相談ください。

📞 06-6713-5544