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整備・メンテナンス

バイクのバッテリーと電装

寿命の見分け方、電圧の測り方、交換の手順(端子を外す順番)、上がらせないコツ、そして「ここから先はお店に」の境目まで。

バッテリーは、バイクの中でもっとも寿命が短い部品のひとつです。オイルやタイヤと違って見た目では減りが分からず、ある朝とつぜんセルが回らなくなって気づく、というのがよくある形です。

ただ、弱ってくるサインは必ず出ています。テスターが1本あれば数字で確かめられますし、交換そのものも、順番さえ守れば難しい作業ではありません。ここでは点検から交換、上がらせないための普段の扱いまでをまとめます。

まず、自分のバッテリーの種類を知る

バイク用バッテリーには大きく2種類あり、手入れの仕方がまったく違います。本体に書かれた型式(例:YTX7L-BS)や、上面に注液口の列があるかどうかで見分けられます。

MF(制御弁式・VRLA)

今の主流です。発生したガスを内部で吸収する構造で、寿命まで液の点検も補水も要りません。型式の末尾が「-BS」などになっているものが多いです。ただし充電はデリケートで、合わない充電器を使うと膨張したり寿命を縮めたりします。

開放型

上面にキャップが並び、減った分だけ精製水を補充するタイプです。旧車や一部の小排気量車に使われています。液が減ったまま使うと危険なので、液面の点検が欠かせません。水道水ではなく精製水を使います。

型式の違うバッテリーを付けないでください。メーカーは「異なる型式の使用はバッテリー爆発の原因となる」と明記しています。新車に搭載されていたものと同じ型式を選んでください。サイズが似ていても、容量や端子の位置が違うと危険です。

寿命と、弱ってきたサイン

バイク用バッテリーの寿命は、一般に2〜3年といわれます。乗る頻度や保管の仕方で大きく変わり、短距離ばかり・長期間放置が続くと、もっと早く弱ります。

  • セルの音が低く、重い。いちばん分かりやすいサインです。「キュルキュル」が「クルル…」に変わってきたら要注意。
  • エンジンを止めた状態で、ヘッドライトやウインカーが暗い。電圧が足りていません。
  • ホーンの音が小さい。エンジンを切ったままボタンを押して確かめられます。
  • 信号待ちでアイドリングが不安定になる。電圧不足で起きることがあります。
  • しばらく乗らないと、かからなくなる。放電に耐えられなくなっています。
感覚だけで判断せず、数字で確かめてください。デジタルテスターは1,000〜3,000円ほどで手に入り、この先ずっと使えます。ただし電圧だけでは分からない劣化もあります(次の章のCCA)。

電圧で確かめる

テスターを直流電圧(DC 20Vレンジ)にして、赤をプラス端子、黒をマイナス端子に当てます。エンジンを止めて数時間置いたあとに測ると、より正確です。走った直後は見かけの電圧が高く出ます。

エンジンを止めているときの電圧の目安 10V以下 12.0V未満 12.0〜12.4V 12.4V以上 ほぼ上がっている 充電しても 戻らないことが多い 始動が苦しい 充電が必要。戻らな ければ交換を検討 やや弱っている 充電しておくと安心 おおむね正常 12.7V前後なら 満充電に近い 低い 高い
止まっているときの電圧の目安。数値は参考値で、車種や気温でも上下します。

エンジンをかけたときの電圧(充電できているか)

バッテリーそのものが元気でも、充電する側が働いていなければ、いずれまた上がります。エンジンをかけた状態で測ると、それが分かります。

状態電圧の目安
アイドリング13.5V前後
2,000rpm13.8V前後
4,000rpm14V前後

回転を上げても12V台のままなら、発電・充電系が働いていない可能性があります。逆に15Vを超える場合はレギュレーターの不具合が疑われます(車種によって規定値が異なるため、サービスマニュアルの数値を優先してください)。

電圧では分からないこと ― CCA

「電圧は12.6Vもあるのに、セルが回らない」ということが起こります。電圧だけを見ていると、この状態を見逃します。ここで出てくるのが CCA です。

CCA(Cold Cranking Ampere=低温始動電流)は、そのバッテリーに、エンジンを回すだけの力がまだ残っているかを表す数値です。JIS・SAE規格では「マイナス18℃で放電させたとき、30秒後も7.2V以上を保てる限界の電流値」と決められています。数字が大きいほど始動性能が高い、ということです。

電圧とCCAは、別のことを見ています 元気なバッテリー 水がたっぷり 水流 出口が太い =一気に力が出る 弱ったバッテリー 水は同じだけある 出口が細い =力が出せない 水の量=電圧 / 出口の太さ=CCA 電圧は正常なのに、セルが回らない
電圧は「どれだけ電気が入っているか」、CCAは「一気に力を出せるか」。古いバッテリーは、電圧はあっても力が出せなくなります。
  • 測るには CCAテスターが必要です。ふつうの電圧計では測れません。3,000〜1万円ほどで手に入り、端子に当てるだけで数秒で判定が出ます。
  • 判定は「基準のCCA」との比べ算です。実測CCA ÷ 基準CCA × 100 で、今どのくらいの力が残っているかが分かります。多くのテスターは「良好/要注意/要交換」と表示してくれます。
  • 基準のCCAは、バッテリー本体のラベルか商品説明で確認します。製品によって記載の有無が違うので、書かれていない場合はテスターの推奨値や同等品の数値を使います。
  • 数値はマイナス18℃を基準にした規格値です。日本の普段の気温での実力そのものではなく、新品時と今を比べるための物差しと考えてください。
電圧とCCAは、両方見るのがいちばん確実です。電圧は「今どれだけ充電されているか」、CCAは「まだ力が残っているか」。電圧が正常でCCAが落ちていれば、充電しても解決しません。交換の時期です。逆に電圧が低くCCAが十分なら、充電で戻ることがあります。

用意するもの

  • 新しいバッテリー今と同じ型式のもの。サイズが似ていても型式違いは不可
  • デジタルテスター1,000〜3,000円ほど。直流電圧が測れるもの
  • CCAテスター(あれば)3,000〜1万円ほど。電圧では分からない劣化が分かる
  • レンチ・ドライバー端子とカバー用。車種によりサイズが違う
  • バッテリー充電器バイク用・自分のバッテリーの種類に対応したもの
  • 手袋・保護メガネ開放型で液を扱うときは必須
  • 精製水開放型の補水用。水道水は使わない
  • ウエス端子の汚れ拭き用

交換の手順 ― 順番だけは必ず守る

作業そのものは10分ほどで終わります。ただし端子を外す順番と付ける順番だけは、絶対に守ってください。ここを間違えると、工具が焼けたりバッテリーが破裂したり、車両側の電子部品が壊れたりします。

外すとき 1 2 マイナス(−)が先 − → + 付けるとき 1 2 プラス(+)が先 + → − 「外すときはマイナスから、付けるときはプラスから」
順番は逆になります。外すときはマイナスが先、付けるときはプラスが先です。
なぜ「マイナスから」なのか 車体(フレーム)=マイナス側とつながっている バッテリー マイナス配線 工具が+端子に掛かっている ここで触れた瞬間にショート
車体そのものがマイナス側の通り道になっているため、プラスを先に外すと工具1本でショートします。
  1. エンジンを切り、キーを抜く

    電装に電気が流れたままの作業は避けます。キーを抜いて、しばらく置いてから始めてください。

  2. シートやカバーを外して、バッテリーを出す

    車種によって場所が違います。シート下、サイドカバーの中などが一般的です。無理に引っぱらず、留めているネジやツメを確認してから外します。

  3. マイナス(−)端子を先に外す

    ここが最重要です。黒い配線側、記号が「−」のほうから外します。外したケーブルは、端子に触れない位置へよけておきます。

  4. プラス(+)端子を外す

    赤い配線側、記号が「+」のほうを外します。マイナスが外れていれば、工具が車体に触れても何も起きません。

  5. 固定バンドを外して取り出す

    思ったより重いので、落とさないように。開放型は液が入っているので、傾けないでください。

  6. 新しいバッテリーを入れ、プラス(+)を先に付ける

    外すときと逆の順番です。プラスから付けます。端子の汚れはウエスで拭いてから接続します。

  7. マイナス(−)を付けて、締め忘れを確認する

    最後にマイナスです。両方の端子を軽く揺すって、ゆるみがないか確かめます。ゆるいと接触不良を起こし、走行中に電気が途切れることがあります。

  8. カバーを戻し、エンジンをかけて確認する

    セルの勢い、ライト、ウインカー、ホーンを確認します。時計やトリップの設定が消えている車種は、ここで戻しておきます。

上がってしまったときは

いちばん確実なのは充電器でゆっくり充電することです。バッテリーへの負担も少なく済みます。

  • 充電器は、自分のバッテリーの種類に合ったものを使ってください。MF(制御弁式)は充電がデリケートで、合わない充電器では膨張したり寿命を縮めたりします。
  • 充電中は火気を近づけないこと。水素ガスが出ます。風通しのよい場所で行ってください。
  • 押しがけやブースターケーブルでの始動は、車種によって勧められない場合があります。電子制御の車両では電装を傷めることがあるため、取扱説明書の指示を優先してください。
  • 充電しても数日でまた上がるなら、バッテリーの寿命か、別の原因があります。次の「上がらせないコツ」と、その下の項目を読んでみてください。

上がらせないコツ

バッテリーは、使わないほうが早く傷みます。乗らない期間が続くときこそ、ひと手間が効きます。

  • 週に1回、30分以上走る。短時間のエンジン始動だけでは、始動で使った分を充電しきれません。むしろ減ります。
  • 長期間乗らないときは、バッテリーを外して保管する。車両につないだままだと、少しずつ電気が流れ続けます(暗電流)。
  • ときどき補充電する。維持充電のできる充電器をつないでおくと、放置していても弱りません。
  • 冬は特に注意。気温が下がると性能が落ち、弱っていたバッテリーが一気に上がります。
  • 開放型は液面を点検する。減っていたら精製水を上限・下限の間まで補充します。

よくある失敗

  • プラス端子から外してショートさせる。いちばん多く、いちばん危険な失敗です。順番を覚えてください。
  • 型式の違うバッテリーを付ける。メーカーが「爆発の原因」と明記しています。同じ型式を選んでください。
  • 開放型を、液が減ったまま使う。これも爆発の危険があります。
  • MFバッテリーに合わない充電器を使う。膨らんだり、寿命が縮んだりします。
  • 端子の締め忘れ。走行中に電気が途切れ、エンストの原因になります。
  • 短時間のアイドリングで充電したつもりになる。始動で使った電気のほうが多く、かえって減ります。
  • 電圧が正常だから大丈夫と決めつける。電圧が足りていても、力(CCA)が落ちていればセルは回りません。「充電したのに直らない」ときは、たいていこれです。
  • 古いバッテリーを家庭ごみに出す。次の項目のとおり、出せません。

古いバッテリーの捨て方

使用済みバッテリーは、一般の家庭ごみとして処分できません。鉛と希硫酸が含まれているためです。購入したお店に引き取りを相談するか、お住まいの自治体の決まりに従ってください。国内メーカーは業界団体を通じて回収・再資源化の仕組みを設けています。
当店でも、バッテリーの点検・交換を承っています。交換の際は古いバッテリーもそのままお引き取りします。処分先に困ったときもご相談ください。

ここから先は、お店に任せたほうが安心です

バッテリー交換で直るのは「バッテリーが寿命だった場合」だけです。次のような症状は、別のところに原因があります。

  • 新品に換えたのに、すぐまた上がる。発電・充電系(ジェネレーターやレギュレーター)の不具合か、どこかで電気が漏れ続けている可能性があります。
  • エンジンをかけても電圧が12V台のまま。充電できていません。走れば走るほど減っていきます。
  • 電圧が15Vを超える。レギュレーターの不具合が疑われます。電球が切れやすい、走行中にエンストするといった症状を伴います。
  • 端子や配線が焦げている・溶けている。触らずにご相談ください。
  • バッテリーが膨らんでいる、液が漏れている。そのまま扱うのは危険です。
  • 配線を加工する電装品の取り付けが絡む。やり方によっては、そこから電気が漏れ続けます。

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バッテリーは、乗らない時間にこそ弱ります

週に一度きちんと走らせること、乗らない時期は外すか補充電すること。この2つだけで寿命はずいぶん変わります。交換のときは、端子の順番だけ守ってください。不安があるときや、換えてもすぐ上がるときは無理をせずご相談ください。

※ 記載の電圧は一般的な目安です。車種ごとの規定値(充電電圧・適合型式)は取扱説明書やサービスマニュアルをご確認ください。
※ 作業はご自身の判断と責任で行ってください。不安がある場合は整備工場へご相談ください。

📞 06-6713-5544