出先で動けなくなるトラブルの多くは、乗る前に気づけたものです。空気の抜けたタイヤ、たるみきったチェーン、切れたブレーキランプ、弱ったバッテリー。どれも走り出す前に数分あれば分かります。
日常点検は法律でも定められていて、保守管理の責任は乗る人自身にあります。とはいえ身構える必要はありません。慣れれば3〜4分で終わります。ここでは、何をどう見るかを順番に沿ってまとめます。
合言葉「ネンオシャチエブクトウバシメ」
教習所で習う語呂合わせです。10個の項目の頭文字をつなげたもので、順番に唱えれば見落としがありません。
| 項目 | 見るところ | 詳しくは |
|---|---|---|
| ネン(燃料) | 残量。タンク下や地面にガソリンのシミ・においがないか | ― |
| オ(オイル) | 量が上限と下限の間にあるか。色が真っ黒になっていないか | オイル交換 |
| シャ(車輪) | 空気圧、溝の残り、ヒビ、刺さった異物。ホイールの振れ | タイヤの基礎知識 |
| チ(チェーン) | たるみ、油が切れていないか、赤錆が出ていないか | チェーンメンテナンス |
| エ(エンジン) | 素直にかかるか、異音がないか、アイドリングが安定しているか | ― |
| ブ(ブレーキ) | レバーとペダルの遊び、パッドの残り、フルードの量と色 | ― |
| ク(クラッチ) | レバーの遊び。つながる位置が極端に手前・奥になっていないか | ― |
| トウ(灯火類) | ヘッドライト(Hi/Lo)、ブレーキランプ、ウインカー、ホーン | ― |
| バ(バッテリー) | セルの勢い、ホーンの音量、灯火の明るさ。ミラーやハンドルのガタも | バッテリーと電装 |
| シメ(締め付け) | ミラー、ナンバー、ステップ、各部のボルトにゆるみがないか | ― |
時間がないときは「ブタと燃料」
10項目すべては無理、という日もあります。そんなときのために、これだけはという簡易版があります。
点検の回り方 ― 車体を一周する
思いついた順に見ていくと、必ずどこかを飛ばします。体の動きに沿って一周すると決めておけば、考えなくても全部見られます。
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まず、少し離れて全体を見る
バイクから2〜3歩下がって眺めます。車体が傾いていないか、タイヤが潰れていないか、地面にオイルやガソリンのシミがないか。近づく前のこのひと目で、大きな異常はたいてい分かります。
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前まわり
前タイヤの空気圧・溝・ヒビ・異物。ブレーキレバーの遊びと、パッドの残り。ヘッドライトとウインカーの点灯。フロントフォークにオイルのにじみがないかも見ておきます。
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右側
オイルの点検窓(またはレベルゲージ)で量と色を確認。リアブレーキペダルの遊び、ステップのがたつき、マフラーの取り付けを見ます。
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後ろまわり
後タイヤ、チェーンのたるみと油の状態、ナンバープレートのゆるみ。ブレーキランプは前後のレバーそれぞれで確認します。片方でしか点かない、というのは意外とよくあります。
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左側
チェーンを反対側からも見ます。サイドスタンドの戻り、ギアペダルの位置とがたつき。
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またがって確認する
ミラーの向きとゆるみ、クラッチレバーの遊び、ハンドルを左右いっぱいに切ってケーブルが突っ張らないか。エンジンをかけて、セルの勢い、アイドリング、異音、ホーンを確かめます。
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走り出してすぐ、ブレーキを試す
最後のひとつは走り出してからです。安全な場所で低速のうちに前後のブレーキを軽く握って(踏んで)、効きに違和感がないかを確かめます。効かないと分かるのは、止まりたいときでは遅すぎます。
数字は「自分の車種の値」で覚える
点検では、いくつか数字を見ることになります。ここで大事なのは、一般的な目安ではなく、自分の車種の値を知っておくことです。空気圧もチェーンのたるみも、車種ごとに違います。
| 見る数字 | どこに書いてあるか | 詳しくは |
|---|---|---|
| タイヤの空気圧 | 車体に貼られたラベル、または取扱説明書 | タイヤの基礎知識 |
| チェーンのたるみ | スイングアームのラベル、または取扱説明書 | チェーンメンテナンス |
| オイルの量 | 点検窓の上限・下限の線、またはレベルゲージ | オイル交換 |
| バッテリーの電圧 | 止めているとき12.4V以上が目安 | バッテリーと電装 |
取扱説明書が手元にない場合、メーカーのサイトで公開されていることがあります。中古で買った車両にこそ、この確認をおすすめします。
毎回のもの、ときどきのもの
全部を毎回やる必要はありません。頻度を分けておくと続きます。
乗るたびに(3〜4分)
「ブタと燃料」の4つ、タイヤの見た目、チェーンのたるみ、灯火類。そして走り出してすぐのブレーキ。ここは習慣にしてしまうのがいちばん楽です。
月に一度・長距離の前に
空気圧をゲージで測る、オイルの量と色、ブレーキパッドの残り、フルードの量と色、各部のねじのゆるみ、バッテリーの電圧。時間を取って落ち着いて見る回です。
よくある見落とし
- ブレーキランプを、片方のレバーでしか確認しない。前ブレーキでは点くのに後ろでは点かない(またはその逆)ということがあります。必ず両方で。
- 空気圧を見た目で判断する。バイクのタイヤは、かなり抜けていても見た目では分かりません。ゲージで測ってください。
- 地面を見ない。止めていた場所にシミがあれば、どこかから漏れています。またがる前に足元を見る癖をつけてください。
- ミラーのゆるみを放置する。走行中に振動で向きが変わり、後ろが見えなくなります。手で軽く動かして確かめます。
- エンジンの音を聞かずに走り出す。かけてすぐの数十秒に、いつもと違う音が出ていないか。異音は早いほど軽く済みます。
- 点検はするが、記録を残さない。「前に空気圧を入れたのはいつか」が分からなくなります。手帳やスマホにひと言で十分です。
ここから先は、お店に任せたほうが安心です
日常点検は「気づくため」のものです。気づいたあとの処置は、内容によって分かれます。
- ブレーキに関わること全般。パッドの交換、フルードの交換、レバーの遊び調整。効かなくなったときの結果が重すぎます。
- どこかから液体が漏れている。オイル、ブレーキフルード、冷却水、ガソリン。場所によって原因も緊急度も違います。
- いつもと違う音・振動がある。原因の切り分けには経験が要ります。悪化させる前にご相談ください。
- タイヤに刺さり物がある、ヒビが深い。そのまま走ると、走行中に空気が抜けることがあります。
- 点検しても原因が分からない。「なんとなく調子が悪い」で持ち込んでいただいて構いません。
くわしくはこちら ― 整備シリーズ
- オイル交換とオイルフィルター交換の目安・粘度と規格の選び方・手順
- チェーンメンテナンス清掃と注油・たるみの測り方・張り調整・交換
- バッテリーと電装寿命の見分け方・電圧とCCA・端子の順番
- タイヤ・パンクの基礎知識空気圧・溝・チューブとチューブレス
点検は、3〜4分の習慣です
合言葉を唱えながら車体を一周する。それだけで、出先で困ることはずいぶん減ります。気になるところが出てきたら、上の各ページで詳しく確かめてください。判断に迷ったときは、無理をせずご相談ください。
※ 点検項目・数値は一般的な目安です。車種ごとの指定は取扱説明書をご確認ください。
※ 作業はご自身の判断と責任で行ってください。不安がある場合は整備工場へご相談ください。