エンジンオイルは、エンジンの中で潤滑・冷却・洗浄・密封・防錆という5つの働きをしています。走るうちに汚れて性能が落ちていくので、定期的な交換が必要です。工具が少なくて済み、効果も実感しやすいので、自分でやる整備の第一歩としてよく選ばれる作業です。
交換の目安 ― 距離と期間、早いほうで
「距離」と「期間」の両方に目安があります。どちらか早く来たほうで交換するのが基本です。
| 目安 | タイミング |
|---|---|
| 走行距離 | 3,000〜5,000kmごと |
| 期間 | 半年に1回(あまり走らない場合も) |
| オイルフィルター | オイル交換2回に1回が一般的 |
※ 車種・年式・乗り方によって推奨は変わります。取扱説明書に記載があればそちらが優先です。
※ フィルターを同時に交換する回は、必要なオイル量が増えます(後述)。
オイルの選び方 ― 見るのは2つだけ
店頭に並ぶオイルは種類が多くて迷いますが、確認するのは「粘度」と「JASO規格」の2つです。あとは予算に応じてベースオイルを選びます。
① 粘度(10W-40 などの表示)
迷ったら、取扱説明書の指定どおりが正解です。日本の気候では10W-40あたりが多く使われますが、車種によって指定は違います。指定と大きく違う粘度を入れると、始動性が悪くなったり、油膜が保てなくなったりします。
② JASO規格(MA / MB)
バイク特有の規格です。ここを間違えると走りに直接影響します。
MA(湿式クラッチ用)
クラッチが油に浸かっている一般的なミッション車向け。摩擦特性が確保され、クラッチが滑りません。MT車はこちらが基本です。
MB(低摩擦タイプ)
クラッチが別構造のスクーター向け。摩擦が少なく燃費に有利ですが、湿式クラッチ車に入れるとクラッチが滑ることがあります。
③ ベースオイル(予算で選ぶ)
| 種類 | 特徴 | 価格帯の目安 |
|---|---|---|
| 鉱物油 | standard。こまめに換えるなら十分 | 1L 1,000〜2,000円 |
| 部分合成油 | 性能と価格のバランス型 | 1L 2,000〜3,500円 |
| 化学合成油 | 高温・高回転に強い | 1L 3,000〜6,000円 |
※ 銘柄・店舗により幅があります。バイクのオイル量は車種により1.0〜3.5L程度です。
用意するもの
- 新品のエンジンオイル車種の規定量+少し余裕を見て
- 廃油処理箱吸収材入りの箱。1,000円前後
- メガネレンチ/ソケットレンチドレンボルトのサイズに合うもの
- オイルジョッキ(1L程度)少しずつ注ぐために必要
- ゴム手袋・ウエスオイルは手や地面につくと厄介
- 新しいドレンワッシャー再使用せず毎回交換が基本
- トレイ(あると便利)ボルトの紛失防止
- トルクレンチ(あれば理想)締めすぎ防止に効果的
- 新しいオイルフィルター交換する回のみ。車種専用品を
- フィルターレンチカートリッジ式の場合。取り付けはカップ型が安心
- 新しいOリング内蔵式の場合。フィルターとセットで交換
※ ドレンボルトのサイズやオイルの規定量は車種ごとに違います。事前に取扱説明書で確認してください。
手順
-
1分ほど暖機する
エンジンをかけて少し温めます。オイルがやわらかくなり、古いオイルが抜けやすくなります。ただし熱くしすぎると火傷の危険があるので、長時間の暖機は避けてください。
-
車体をまっすぐ立てる
センタースタンドがあれば使います。無い場合はメンテナンススタンドか、誰かに支えてもらいます。傾いたままだとオイル量を正しく測れません。
-
ドレンボルトを外し、古いオイルを抜く
下に廃油処理箱を置き、ドレンボルトを反時計回りに緩めます。外れる瞬間に勢いよく出るので、位置に注意。抜けきるまで5〜10分ほど待ちます。オイルは熱いので必ず手袋を。
-
ボルト周りを掃除し、新しいワッシャーで締める
ドレンボルトの座面とネジ山をウエスで拭き、ゴミがない状態にします。ワッシャー(パッキン)は新品に交換し、規定トルクで締めます。トルクレンチがあれば理想的です。
-
新しいオイルを少しずつ入れる
規定量よりやや少なめから入れ、点検窓(またはレベルゲージ)を見ながら少しずつ足していきます。一気に入れず、確認しながらが失敗しないコツです。
-
エンジンをかけて、もう一度量を確認
1〜2分アイドリングしてオイルを行き渡らせ、止めて少し待ってから量を再確認します。上限と下限の間に入っていればOK。ドレン周りから漏れがないかも必ず見てください。
-
廃油を正しく処理する
吸わせた廃油処理箱は、お住まいの自治体のルールに従って処分します。下水や地面に流すのは絶対にNGです。処分方法が分からなければ、購入店やガソリンスタンドに相談を。
オイルフィルターの交換
フィルターはオイル内の汚れを受け止める部品です。詰まってくると本来の役目を果たせなくなるので、オイル交換2回に1回を目安に交換します。まず、ご自身のバイクがどちらのタイプか確認しましょう。
カートリッジ式
エンジンの外側に金属の缶が付いているタイプ。缶ごと丸ごと交換します。外から見えるので分かりやすく、作業も比較的シンプルです。
内蔵式(エレメント式)
エンジンのカバーの内側に、紙のフィルターが入っているタイプ。カバーを外して中身だけ交換します。SR400など、このタイプの車種も多くあります。
カートリッジ式の手順
-
古いフィルターを外す
オイルを抜いた後、フィルターレンチで反時計回りに緩めます。中にオイルが残っているので、こぼれる方向に注意してください。
-
取り付け面をきれいに拭く
エンジン側の接触面をウエスで拭きます。このとき古いパッキンが張り付いて残っていないか必ず確認してください。残ったまま新品を付けると、二重になって確実に漏れます。
-
新品のパッキンに薄くオイルを塗る
新しいフィルターのゴムパッキンに、指で新しいオイルを薄く塗ります。これで密着がよくなり、次回外すときも固着しにくくなります。
-
手で締めてから、規定どおりに締める
まず手で回していき、パッキンが接触してから規定トルクで締めます。爪が食い込むタイプのレンチは取り付けに使わないでください(缶が変形します)。取り付けにはカップ型が適しています。
内蔵式の手順
-
カバーのボルトを外す
エンジン横のフィルターカバーを、六角レンチなどで外します。下側のボルトを緩めるとオイルが流れ出るので、下やマフラーにウエスを敷いておきます。
-
古いフィルターを抜き、汚れを見る
紙のフィルターを取り出します。このときキラキラした金属粉が付いていないか確認してください。付いている場合はエンジン内部が削れているサインなので、お店に相談を。
-
Oリングを必ず新品に交換する
カバーとエンジンの間には大小のOリングが入っています。古いものは変形して弾力を失っているため、フィルターとセットで交換します。ここを省くとオイル漏れの原因になります。
-
向きを確認して組み付ける
新しいフィルターには向きがあります(穴の開いた側をエンジン側に向けるなど)。取扱説明書や、外したときの状態を確認してから入れてください。カバーを戻し、ボルトを均等に締めます。
フィルター内にもオイルが入るため、フィルター交換時の規定量は通常より多いのがふつうです。取扱説明書には「オイル交換時」と「フィルター交換時」の2つの数値が書かれていることが多いので、確認してから買いましょう。
よくある失敗
いちばん多い失敗です。ネジ山をなめてしまうと、エンジン側の修理が必要になり、費用も手間も一気に膨らみます。「もう一回転」と力を入れたくなったら、そこで止めてください。
- ワッシャーの再使用:つぶれたワッシャーを使い回すと、そこからにじみます。毎回交換が基本です。
- 入れすぎ:量が多すぎると圧力が上がり、かえって不調の原因になります。少なめから足すのが安全です。
- 傾いた状態で測る:サイドスタンドのままだと正確に測れません。必ずまっすぐ立てて確認を。
- 規格の見落とし:MT車にMB規格を入れてしまう例。缶の表示を確認しましょう。
- 廃油をそのまま捨てる:環境汚染につながるうえ、法令にも触れます。処理箱を使ってください。
ここから先は、お店に任せたほうが安心です
オイル交換自体は難しい作業ではありませんが、次のような場合は無理をしないことをおすすめします。
- ドレンボルトが固くて回らない/なめかけている:無理に回すと状況が悪化します。
- 締める強さの加減が分からない:トルクレンチがなく不安な場合。ここでの失敗は代償が大きい作業です。
- オイルが極端に汚れている・金属粉が混じっている:エンジン内部に問題がある可能性があります。
- 抜いても量が明らかに少ない:どこかで漏れているか、消費している可能性があります。
- 作業する場所がない:オイルをこぼすと洗い流せません。集合住宅の駐車場などでは特に注意が必要です。
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特別な技術は要りませんが、締め付けと量の確認だけは丁寧に。手順を守れば、エンジンの調子を長く保てます。作業に不安がある場合や、途中で困ったときは無理をせずご相談ください。
※ 記載の目安は一般的なものです。車種ごとの指定(オイル量・粘度・締付トルク)は取扱説明書をご確認ください。
※ 作業はご自身の判断と責任で行ってください。不安がある場合は整備工場へご相談ください。